取材の仕方について思うこと


Facebookで見つけた下記の投稿が気になって、ちょっと考えをまとめてみる。
・・というつもりだったけど、書き始めて20日くらい放置しており、内容がわけわかんなくなっていたらごめんなさい(大汗)

◆いいインタビュー原稿の条件 https://note.mu/fumiken/n/n5fb95624ec22

筆者は録音した音源を聞くことで、“のっぺらぼうの文字情報”になるのを防いでいるという。

記事の是非は別にして、じゃあ録音を聞くという行為がライターにとって必須なのだろうか、という点が気になった。
俺は取材時に録音をするものの、まったくと言っていいほど聞き返すことがない。だが、のっぺらぼうの文章を書いているつもりはない。「あとで聞き直せばいいや」と思っていると、その場の話を理解しないまま取材が終わり、結果として原稿の質が下がってしまうのではないかと考えるからだ。

■ライターの取材スタイルは多岐にわたっている

残念ながら、他のライターの取材に立ち会う機会はまったくと言っていいほどないのだが、多くのライターとの接点を持つディレクターや編集者、カメラマンに聞くと、以下のようなタイプがいるらしい。

(取材中)
・取材中はボイスレコーダー(大昔はカセットテープ)で録音するだけ。ただただ会話を繰り広げるのみ。
・メモはパソコン。会話の内容をその場でテキスト化する。(そのテキストを再構成して原稿化するのだと思う)
・ノートにメモを取るだけで、録音は一切しない。
・自分はしゃべるだけでアシスタントに記録を任せる。
・iPadの手書きメモに書くデジタル野郎。(知り合いにいる)
・なんにも記録を取っていないのに、原稿はしっかり仕上げる人(記憶で書いている?)

(取材後)
・ボイスレコーダーを聞き返しつつ、時折メモを見ながらすべて自分で文字に起こす。
・どんな取材でも業者に頼んで全文を文字起こしする。
・文字おこしせず、メモのみで書く。

複数の項目に当てはまる人もいるだろうが、ざっとこんな感じである。

■メモだけで書く意味

俺の場合は、基本的に話はすべてメモに取り、一応、録音もしているがメモ漏れや専門用語を確認するための“保険”扱い。長文のインタビューを仕上げるときは聞き直すこともあるが、メモとの整合性をチェックする程度で、音源に依存することはない。

取材後はメモのみで原稿を仕上げる。俺の文字はミミズの這ったような汚さで、第三者が読もうと思っても解読は不可能だろう。当の本人でさえ首を傾げるときもあるが、メモの前後を見ていると会話の記憶が蘇ってくる。手を動かすことによって、会話を頭に暗記しているという感覚といえばいいだろうか。学生時代、いらない紙に英単語や世界史の人物名を書いて覚えていたが、それと似たようなものだ。

正確に会話が再現されるレコーダーを聞けばいいのではないかという声が聞こえてくるのはよくわかる。 それでもなお、メモで原稿を書く理由は、“場の流れ”を掌握するためと行っても過言ではない。

予め用意した質問通りに取材を進めるだけのライターはほぼ存在しないだろう。会話のキャッチボールの中で新たな疑問が浮かび、想定した質問とは異なる角度からの話に膨らんでいくことで、より厚みのある原稿を作り上げることができる。となると、どのような話を、いつ振って、どういうふうに返って来たのかを把握しておく必要がある。

リアルタイムに会話が進行している中では、巻き戻して録音を確認する訳にはいかないが、メモをめくれば時間はすぐに戻せる。10分前、20分前の何気ない取材相手の発言と、今の瞬間にした発言に関連性があると気付きやすくなるのではないだろうか。そもそも暗記パン効果で自分の脳に会話を刻んでいるため、パッと時間を巻き戻すこともできる。スピーディに取材の流れを振り返ること、流れを掌握することで、厚みのある取材ができると思う。

ちなみに聞き直すという作業が発生しない分、原稿も比較的スピーディに仕上げられるというメリットもある。反面、思い込みであらぬ方向に話が進むという恐れもあるが、取材をしながらある程度、原稿の方向性を決めて質問すれば大きなズレは生じない。自分のジャンルが基本的には先方の原稿チェックがあるので、後で確認してもらえるというのは一つの保険となっている。新聞記者などはメモ書きで原稿を作成することが多いというが、本人チェックに拒否反応を示す媒体だけに、色々な問題が生じるのでないかと思う。

■音源を聞いていると締切が…

音声を聞き直す人を批判するつもりはない。言葉の一つ一つをありのまま本人の文字にしたいのであれば、有効な手法である。メモもしっかり取って、録音も聞き返して、ある程度文字起こしをして、原稿制作にかかるというのがベストなのかもしれない。

だが、締切に間に合わせるのがプロの最低条件だとも思っているから、一つひとつ文字起こししていたのでは、到底、締め切りに間に合わせることはできないとも感じている。仮に文字を起こしてというのを必ず原稿制作のプロセスに入れるならば、時間短縮のために文字起こしたデータをコピペして、ちょいちょいと形を整えて納品というパターンが多くなってしまうのではなかろうか? 取材でインプットした言葉を自分なりに咀嚼して、原稿として吐き出していくというのがライターという仕事だと思っているから、それは違うなぁという感想ですわ。

そんなこんなで、ボイスレコーダーよりも、取材ノートを落とした時の方のダメージが遥かにでかいので、これからはノートに名前を書いておこうと思う的な落ちで。

なお、そもそも自分の声が嫌いなので、音源聞いていると「わぁぁぁぁぁ」と叫んで練馬の畑の上を走り出しそうになるから、ってのがテープ起こしを嫌う最も大きな理由かもしれませぬ。

 

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